参考書・問題集「浮気」のススメ

 その昔「浮気は文化だ」と言った芸能人がいましたが、ここで取り上げるのはそういうことではありません。今回言いたいことは「参考書・問題集は複数手を出してもいいよ」と、その一言です。それにはいろいろ条件がつきますが、言いたいことは一つです。

1.1つの問題集を繰り返すこと

 受験生活を続けていくと「問題集を最低3回繰り返せ」とか「いろんな参考書に手を出しすぎることはいけない」というようなことを耳にします。そう考えると「あぁ、1冊の参考書をひたすら繰り返すのがいいのかなぁ」という結論に達する人もいるでしょう。

 しかし「1つの問題集を繰り返す」ということは、「他の問題集に手を出してはいけない」ということを意味していません。

 というのは、試験本番まで時間がない(半年を切るくらい)人を除いては、問題集3回なんてのはあっという間だからです。

2.繰り返すことの意味

 問題集を繰り返しやらなければいけない理由は、いくつか考えられます。

 まずは「忘れるから」ということ。人間は放っておくとすぐに忘れます。眠るたびに忘れるようです。これに対処する方法としては、繰り返しやって体(脳)に染み込ませるしかありません。

 また、「一通り学習し終えることで、新たな視点で問題に取り組める」ということも挙げられます。一通り学ぶことで全体像をつかむことができ、1回目で理解できなかったことが理解できるようになるということです。

 他にもいろいろあると思いますが、いずれにせよ、問題集は複数回やる必要があります。

3.いわゆる「倦怠期」

 夫婦や恋人同士の間では「倦怠期」というものがあります(無い人達もいるかもしれませんが)。仲の良い生活を繰り返していくうち、だんだんと最初のときめきが失われて、相手に不満たらたらになる、というアレです。一時期の場合もありますし、そうでない場合(これを倦怠期と呼ぶかは不明)もあります。

 さて、実はこの倦怠期、参考書・問題集との付き合いにも当てはまります

 人間の倦怠期の理由は様々でしょうが、参考書・問題集との倦怠期の理由は、何度やっても理解できない部分がでてくることや、問題、解説を覚えてしまうことでしょう。

 最初の段階では、自分が間違っていた所が、その参考書・問題集の説明得意分野であることが多くあります。その場合「あぁ、なんて理解しやすいんだろう」という思いがします。

 しかし、何回か繰り返しやっていくうちに、何度やっても間違う問題が出てきます。そこはおそらく、その参考書・問題集の説明苦手分野です。そのような場合、自分の勉強法を疑ってみたり、参考書・問題集への評価を下げたりします。いずれにせよ、良い状態ではありません。

 上では「説明得意分野」「説明苦手分野」と簡単に片付けましたが、実際はそうでない場合もあります。参考書・問題集が簡潔でよい解説をしていても、自分の実力が追いついていない場合がそうです。必須問題集・参考書が必ずしも自分に一番わかりやすくないのは、各自のスタートラインが異なるからです。

 「問題・解説を覚えてしまう」と、参考書・問題集学習がただの「作業」になってしまいます。繰り返し問題を解き、解説は読んでいるけれど、そこに何の進歩もなくなります。そんな問題はちょっとひねられればアウトです。

 さて、そうなったらどうするか。結論からいうと「浮気をしましょう」ということになります。

4.「浮気」の効用

 「浮気」とは、本命として複数回使っていた問題集以外の問題集に手を出すことをいいます。そして、「浮気」は勉強に新しい視点をもたらしますが、そこから、いろいろな効用が生まれてくることになります。

苦手事項の克服

 新しい視点の導入は、苦手事項の克服につながることがあります。

 先ほど「参考書・問題集に説明苦手分野がある」と書きましたが、これが新しい参考書で上手く解説されている場合があります。そういった点で、苦手の克服になります。

 また、新しい視点を導入することで、本命の参考書の説明がわかる場合があります。それは、本命の参考書・問題集でもある程度詳しい解説がなされていた。しかし、自分の側にその説明を読み解く視点が欠けていた、もしくは全く異なる(不要な)視点でその説明を見ていた場合にあてはまります。そうなると「浮気」をしたことで、「本命」の説明が俄然わかりやすくなります。相乗効果で理解が深まります。

 よく「本は読む時間、時代によって、まったく別の顔を見せる」といいます。例えば『我輩は猫である』は青年期読んでも面白くないが、30超えて読むと面白いそうです。参考書・問題集も同様で、その人の知識、それまで身に付けてきたものによって、全く効果が異なってきます。「GUT」がいいだの「ウォーク問」がいいだの「スーパー過去問」がいいだの言いますが、結局は、ある程度評判の均衡している問題集のどれを選ぶかは、その人それぞれなのだということです。

穴をなくす

 参考書・問題集が変わると、「本命」で全く触れていなかった項目が出てくることがあります。その逆もありますが、「浮気」の効用には穴をなくす効用もあります。

 「本命」を複数回やって、「ある程度やった」という実感をもっていると、その教科に対して自信を持ってきます。そんなときに「浮気」相手に未習部分を見つけると焦ります。

 多分、人間というものは、自信を持っているものの穴をつかれるのが悔しい生き物です。自信を根底から覆されるほどの穴を突かれたら立ち上がれなくなるでしょうが、ちょっとした穴の場合は、それを塞いでやろうという気が出てきます。穴を見つけ、それに対処していくことで、その科目の実力がつき、自信がさらに出てくるでしょう。

(おまけ)気分一新

 これは非常にわかりやすい効用です。

 新しい参考書・問題集になると、気分が変わって勉強しようという気になります。学生時代新しいノートにワクワクした感覚です。最初の数ページだけ、やたらと上手く字を書いた記憶があります。

 ただ、ノートの場合、進めば進むほどキレイな字を書こうという気は失せてきますが、参考書・問題集でも同様です。気分が乗っている内にガンガンやりましょう。また買ってやらずにいても、気分はどんどん失せてきます。

5.「浮気」から「本気」へ

 「浮気」をして、その後「本命」に戻っていく場合もありますが、そのまま「浮気」が「本気」になってしまうこともあります。

 さて、そんな場合は、「本命」だった参考書・問題集のことは忘れて「浮気」相手を「新・本命」に変えていけばいいです。人間の場合は解決しなければならないことが山済みですが、参考書・問題集の場合は特にありません。

 この時期(つまり参考書・問題集を1冊複数回やって、他にも少し手を出した状態)になると、科目の全体像もつかめ、参考書・問題集の良し悪し、自分にとって合う合わないが分かるようになります。一番最初に使っていた参考書・問題集は、大体が評判を聞いて買ったり、直感で買ったりしたものでしょう。ならば、これを機に、それ以降取り組むべき参考書・問題集を決めなおすのもアリかと思います。もちろん、決めなおした結果、一番最初の問題集に戻っていくこともあります。

 「1冊と心中しなければならない」という思い込みをもたず、臨機応変に動きましょう。

6.「浮気者」と「ただの好色家」の分かれ目

 さて、さんざん「浮気」を持ち上げてきましたが、「浮気者」と「ただの好色家」は異なります。

 これらの違いは、ただ1点、「本命に十分尽くしたか、尽くしていないか」ということにあります。先ほど「『本命』に倦怠期を感じたら、『浮気』に走る事をオススメする」という事を書きました。それは、「浮気」に走ることで、勉強全体に新しい展望が開ける可能性があること、そして、「本命」のこともよくわかるがあるからです。「浮気」を無条件にオススメしているわけではありません。

 「ただの好色家」とは、参考書・問題集を固定する事なくフラフラしている輩です。勉強初期の段階で参考書・問題集を買っただけで満足してしまう人なども、「好色家」の範疇に入ります。「本命」を適当にやって、フラフラ「浮気」しているようでは、勉強の全体もわかりませんし、「本命」の理解もできません。

 ただ、断っておきたいのは「本命」複数回やった後、「浮気」相手をフラフラ替えるのは「好色家」ではないという点です。「本命」を複数回やった時点で、ある程度の全体像は掴めます。全体像をつかんだ上での「浮気」の繰り返しは「好色家」ではありません。

 まずは1冊、しっかりと取り組んでいくことが大事です。

7.「ベストな恋より、グッドな恋をしよう」

 「ベストな恋より、グッドな恋をしよう」は、中谷彰宏さんの本の1節です。ベストな恋を1つ探すより、ベター、またはグッドから始めよう。そしてベストへと結び付けていこう、というものです。

 勉強時間が限られているため、「失敗しない参考書・問題集選びをしよう」と考えると思います。しかし「ベストマッチな1冊」を探すことに躍起になるあまり、自分の今やっている参考書・問題集に集中できなかったり、いろいろな参考書・問題集に同時進行的に手を出していくことは懸命ではありません。

 それよりは、今やっている1冊を集中して、いい所を全部吸収しよう、いい勉強をしようと考えた方がいいと思います。

 参考書・問題集1冊だけで受験生活の時間は使い切れません。もっと気楽に、1冊と付き合っていくようにした方がいいと思います。


 なんだか今回は、だいぶ抽象的・観念的な話になってしまいました。また、繰り返しになりますが、筆者は決して人間社会の浮気を推奨するものではありませんので。浮気しちゃだめです。


【参考文献】 中谷彰宏『運命の人(ソウルメイト)と結婚するために』(三笠書房)



Koufuri topに戻る